場所は、どこかの河原。
そこで7歳ぐらいの女の子が泣いていた。
彼女が泣いている理由は、よくある、親が考える「いい子」の期待に沿える事ができなくて、
理不尽な気持ちでいっぱいになっている、というものであった。
『あれしなさい、これしなさい!』
「してるよ!」
『〇〇ちゃんは、親の言う事をよく聞くいい子なのに!』
「私だって、ママとパパのいう事を聞いてるよ!」
『△△ちゃんは、テストで何点、スポーツイベントでトップ、云々・・・』
「私だってがんばってるんだし、いい点とる事もあるのに!」
『今度のテストでいい点数取ったら、欲しがっていた◇◇のおもちゃ買ってあげる』
「・・・その約束が本当になった事がなく、いつも、とぼけられるの・・・」
「家に帰りたくないなあ」
少女は、ため息をついた。
「いい子って、なんなの?」
そうつぶやき、再度彼女は泣き始めた。
この河原を散歩している成人男性が、泣いてる少女を見かけると、すぐに声をかけた。
彼はウエーブがかかった長い髪とヘアバンド、さらには今日の服装は白いもので、
漫画の神様風の外見となっていた。
「どうしたんだい?」
少女は、話しかけて来た男性を見ると、泣き止んでこう言った。
「か・・・神様だ!神様が現れた!」
そう言われ、驚く男性。
「お・・・俺は神様じゃないんだが・・・」
とは言うものの、自分の恰好が漫画の神様風の外見だという事に気が付き、彼はこう言った。
「落ち着きなさい少女よ。話を聞こう。その前に名前を聞こうか」
少女はすぐに、「名前は花梨(かりん)なの・・・」と答えた。
「そうか、花梨ちゃんなのか・・・」
「神様は名前あるの?」
花梨にそう聞かれ、男性は驚いたが、とっさにこう返したのだった。
「お、俺の名前はゼウスだ・・・」
「ゼウス!かっこいい名前だね!」
もちろん彼は神様ではないのと同時に、名前はゼウスでもない。
「ところで・・・なんで泣いてたんだい?」
『ゼウス』が聞いた。
すると花梨は、再び泣き始め、『ゼウス』の胸に顔をうずめた。
そして話始める。
普段からママとパパに自分は悪い子だと言われている。
あれしなさい、これしなさいと色々言われてるが、ちゃんとやっているのに。
同級生や近所のお友達を引き合いにして「〇〇ちゃんは頑張ってるのに!1位なのに!」と言われたり、
次のテストでいい点数が取れたら欲しいおもちゃ買ってくれる約束をしても、いつも踏み倒される、
等々、不満をぶちまける。
いくら子供本人ががんばっても、「親の理想の子供」には、なれないのだ。
「ねえ神様。どうやったら大人たちが思う『いい子』になれるの?もう私には無理だよぅ・・・」
そう言って花梨は『ゼウス』に抱き着いた。