「それでは、俺のお姫様、希美(のぞみ)の誕生日を祝って・・・」
「カンパーイ!」
大勢の男性が、1人の女性の誕生日を祝っていた。

大勢のイケメン男性が1人の女性を囲んでいる。
ゴージャスなソファ、テーブルにはパティシエが作ったケーキや高級シャンパンやフルーツが並んでおり、
高級感あふれる空間、ここはまるで逆ハーレムの国のようだが、もちろんここは、そんな国ではなく-----
『ホストクラブ ナイトショコラ』、これがその場所の名前であった。
希美は客で、周りにいる男性は全てホストである。
そして、乾杯の音頭を取ったホストは、希美が惚れ込んでいるホストであった。

「ありがとう雅也!」
雅也(まさや)とは、そのホストの名前だった。但し、本名ではない。
希美は雅也に抱き着いた。

「さあ、希美の誕生日を祝おうぜ!」
雅也が言うと、他のホストはオーッ!と声をあげた。

「改めて言うよ・・・誕生日おめでとう希美」
雅也はそう言って、希美の手の甲にキスをした。

「はい、あーんして」
雅也が一口分にカットしたケーキを希美に差し出した。
言われた通りに希美が口を開けると、そのケーキが口に入れられた。
「雅也に食べさせてもらって幸せだわ・・・!」
ポワーンとした様子で希美が言った。
ところでテーブルに置かれているケーキやシャンパンやフルーツなどの豪華な食べ物は、
確かに希美の誕生日祝いとして置かれているものなのだが、
店やホスト側のおごりではなく、希美本人の支払いなのである。
そしてそれらは雅也の売り上げとして計算される。

ソファに座り、雅也の肩に抱かれている希美は、すっかり幸せ気分だった。
時折シャンパンを飲みながら-----

そこに、別の席からホストの声がした。
「シャンパンタワー入りまーす!」
そして他のホストも『ありがとうございまーす!』と声をかける。

「おっ、勇一も頑張ってるな!」
勇一(ゆういち)とは、先ほどシャンパンタワーが入ったホストの名前である。
「あいつは後輩なんだけど、すげえ頑張ってるんだ。俺も負けられないな」
雅也がそう言うと、希美は「じゃあ雅也に協力してあげる!」と言い、
しばらく考えたのちに、「ドンペリピンクを頼むわ!」と言った。
「ありがとう!」と雅也は言い、「ドンペリピンク入りまーす!」と店内に声かけした。
直後、「ありがとうございまーす!」と、他のホスト達からの声がした。

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