ホストに惚れ込んでいると、当然の事ながら、たくさんのお金がいる。
売上に貢献しないと、相手にされなくなる。
自分に目を向けたいなら、たくさん飲食物を注文しなければいけないのだ。
希美の貯金は、既にほとんどなかった。
給料も、『雅也への愛』で、ほとんど消えてしまう。
普段の食事はスーパーの見切り特価、もしくは業務用食材店でまとめ買いをしている。
もちろん仕事場の昼食も、お弁当を作って持っていくのだ。
当然の事ながら、普通の節約ではホストへの貢献は出来なくて-----
「バイト・・・いいところないかなあ・・・」
希美は既に借金をしているのだが、若い会社員だとそんなに借りる事はできず、
たくさん借りられる所でもトイチやトサンがあったりするのだ。
そんなある日の『ホストクラブ ナイトショコラ』での事。
雅也がホールスタッフに呼び止められた。
「雅也に惚れ込んでる希美って客が、」
「・・・そいつが何かしたのか!?」
「いや、儲かるバイトあったら紹介してほしい、雅也にたくさん貢献したいから、って言ってたんだ」
「ああ、そうなのか・・・」
「だから、ロジャーの所を紹介したぜ」
「そうか。すまんな」
「気にすんなって。それに客が儲けたら、その儲けがこっちに来るようになるからな。
それに一応声かけたんだ。ロジャーから雅也に直接連絡来てもわかるようにな」
『ロジャー』と書かれたメモを、希美はじっと見ていた。
そこには連絡先として電話番号が書かれている。
まずはそっちに電話するように、と、ホールスタッフから言われていたのだ。
儲かるバイトを教えてもらったけど、危険じゃないかしら。
そんな不安があったが-----
「だっ、だめよ!雅也に貢献するためには、私が儲けなくちゃ!
雅也のためなら、危険でも構わないから!」
意を決して正美は電話をかけ始めた。
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