「よいしょ、よいしょ」
そんな声がする。
大きな荷物を持った女の子が道を歩いていた。
彼女の名前は琴美(ことみ)、小学1年生の女の子だ。
2つ隣の市から、電車を乗り継いてやってきた。
今日は親戚のお兄ちゃんの家にお泊りに行くのだ。

2つ隣の市に電車を乗り継いで行くのはそんなに距離が無いとはいえ、小学1年生の女の子にとっては大冒険である。
行くまでの経路、何線の何行きの電車に乗る、もしくはどこの駅で乗り換え等を書いてる紙は持っているのだが、
母親には「何かあったら電話しなさい。道に迷ったら公衆電話を使いなさい」と念を押されている。
琴美は小学1年生なので、スマホも携帯電話も持たせてないため、外からは公衆電話を使いなさいと教えられているのだ。
そして、「何もなくても電話しなさい。無事だという証明になるから」とも言われていた。

やがて琴美は、とあるマンションに着いた。
ここが親戚のお兄ちゃんが済んでいる場所である。

「〇〇号室・・・ここだね!」
琴美はそう言って、ドア横のインターホンを押した。
ピンポーン♪
しばらくしてインターホンから声がした。
「琴美ちゃんだね!開けるね」
この部屋に住んでる親戚のお兄ちゃんが言った。

ガチャガチャと鍵を開ける音がし、直後ドアがひらいた。
「いらっしゃい琴美ちゃん」
親戚のお兄ちゃんの光男(みつお)が言った。
光男は21歳、とある会社に勤める会社員で、今は夏季休暇期間なのである。
「こんにちはお兄ちゃん。しばらくお世話になります」
琴美が言ったのだが、小さな子供ながらもそう言えたのは、
出発時に親たちに最初にこう言いなさいと言われている事によるものだった。

「電車に揺られて疲れただろう、荷物置いたらアイスクリーム食べようか」
「うん!」

期間は1週間と短いながらも、成人男性の光男と小さな女の子の琴美の2人の生活が始まった。

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