場所は、とあるデパートの婦人服売り場。
そこに小学1年の娘を連れた若い母親がいた。
母親は、今度行く同窓会の服を見に来たのだ。
「ねえ、退屈だよぉ!」
連れてる娘の恵夢(えむ)が言った。
「お母さんね、今度たくさん人がいるパーティーみたいな所に行くから、そのための服を選んでるのよ」
同窓会と言っても、小さな恵夢にはわからないので、そういう説明しかできなかった。
「えっ、パーティー!?私も行きたい!」
恵夢はまだ幼いので、当然の事ながらパーティーと言われて、そう言ったのだが・・・
「大人しか行けないパーティーなのよ。ほら、シンデレラだって舞踏会の場面には子供の参加者はいなかったでしょ?」
「うん・・・」
「そんなパーティーには着飾らないと恥ずかしいからね」
恵夢の母親が同窓会用の服をデパートで買う理由は、
ありがちだが通販で服を買って、届いたら『思ったのと違う!』という事があったからだ。
ただ、よくある事だが、母親が服、さらにはそれに合わせたアクセサリーを選ぶ時は、すごく時間がかかるのだ。
ましてや同窓会に来ていく服なら尚更の事である。
同窓会は見栄張りやマウント取りのバトル会場でもあり、着ていく服は戦闘服の役割でもあるのだ。
その戦闘服選びの場所に連れて来られた子供は、退屈地獄を見る事になる。
「お母さん、退屈だよ!」
恵夢が再度言った。
「待っててね。パーティーの服は、よく選ばないとね・・・」
「もー・・・」
ふてくされて座り込む恵夢。
「服とアクセサリーを買うまで、いい子にしてたら、レストラン街のパフェ食べようか!」
デパートで待つのと引き換えに、普段食べられないような物を条件に出してくるのは、よくある話だ。
恵夢は飛びつくように「わあい、私チョコレートパフェ食べたいな!」と言った。
「パフェ食べたかったら、おとなしく待っててね」
母親はそう言って、服選びを再開した。
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