階段を上りながら、男性は「お嬢ちゃん名前は?」と聞いた。
恵夢は「恵夢!」と、元気に答えた。
「そうか、恵夢ちゃんか・・・」
男性が確認するように言った。
「おじさんの名前は?」
そう言われて男性は吹き出し笑いをしそうになった。
「お・・・おじさんって・・・。ま・・・まあ、小さい子供からしたら俺ぐらいの年齢はおじさんだよなあ・・・」
20代後半の成人男性に無慈悲に「うん、おじさん!」と答える恵夢。
「あ・・・。うん。おじさんの名前はマイクだよ」
男性は、そう答えた。さすがにこんな所では本名は言えない。
このマイクと名乗る男性の本名は直樹(なおき)であった。
「へえ!外国人みたいでカッコいい!」
「うん。でも名前は内緒にしてね。いつも外国人みたいだって言われるのがイヤなんだ」
「はーい」
素直に返事をする恵夢。
デパートなどの大型店の階段には、本当に人がいない。
人がいない階段を、上って行く2人。
売り場最上階に出る階段の上にも、まだ階段があった。
最上階のシステム管理用設備への出入り口があり、そこに通じる階段にはロープが張ってあり『立ち入り禁止』と書いてる札がぶら下がっている。
「さあ着いたよ。このロープをくぐって、さらに上の階に行くんだ」
「うん!」
張ってるロープを掴んで上に上げ、恵夢を通す直樹。
通ったのを確認すると、自分も入り、ロープを手放した。
さらに階段を上り、この階段の最上階のシステム管理用設備のドア前に到着した。
ドアには『関係者以外立ち入り禁止』と書いてあり、ガッチリと鍵が掛けられている。
「なんだか人が来ないような寂しい場所だね・・・」
恵夢が言った。
「特別なパフェだから、あまり他に人には見られたくないんだよ」
「特別なパフェ!?すごいすごい!」
恵夢は興奮し始めた。
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