「さあ、パフェ食べるのは、これで終わりだよ」
ウェットティッシュを取り出し、直樹が言った。
「うん!ありがとう、ごちそうさま!」
「クリームでベタベタになった口周りを綺麗に拭こうね」
「うん!」
綺麗に、念入りに、恵夢の口周りを拭く直樹。
もちろん、拭き取りは証拠隠滅でもある。
顔についたクリームやチョコソースなどを拭き取るのはもちろん、服にもクリームなどの汚れがないかもチェックする。
-----よし、綺麗に拭きとれたな。表向きは大丈夫だ。
直樹は顔や服の汚れがないかの確認のあと、カバンから小型缶のお茶を取り出して恵夢に差し出した。
「これでお口直ししよう。口の中の甘いのを、お茶でサッパリさせるんだよ」
「うん!」
パシュッ!と音をたて、お茶の缶を開封すると、恵夢に持たせ、
「さあ飲んで」と言った。
持たされた素直にお茶を飲む恵夢。
この『お茶で口直し』も、証拠隠滅のひとつだ。
口の中にクリームやチョコソースなどが残ってたら母親に気づかれ「どこで食べて来たの!?」と聞かれる可能性もある。
また、口の中にクリーム等が残ってなかったとしても、においで気づかれるかもしれないのだ。
お茶を飲ませて証拠隠滅を図るのだ。
「お茶、全部飲めないよ・・・」
そう言って恵夢は、お茶が半分ほど残った状態で缶を直樹に返した。
「うんうん。お口直しが目的だから、全部飲まなくてもいいんだよ」
缶を受け取り、直樹が言った。
「さあ、パフェも食べ終えたし、そろそろお母さんの所に戻るといいよ」
「うん!」
「でもその前に、守ってほしい事があるんだ」
「なあに?」
「パフェを食べさせてもらった事は、大人に、特にお母さんやお父さんに言っちゃダメだよ」
「どうして?」
「子供の場合、知らない人から物をもらっちゃダメって言われてると思うんだ。だからなんだけど・・・」
「うん。こないだも、下校中に道にいた人からガムをもらったんだけど、『なんでもらったの!?捨てなさい!』って怒られて捨てた事があったの・・」
「そ・・・そうなんだ・・・」
思わぬ話を聞き、直樹は驚いた。
とはいえ、確かに知らない人から食べ物をもらった場合、何が入ってるかわからないから、というのもあるかもしれないが・・・
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