とある女子高体育館で卒業式が行われている。
校長先生による「みなさん、卒業おめでとうございます・・・」というマイクを介した声が、体育館の外にいても聞こえていた。
そんな声を聞きながら、体育館裏の、たくさんの桜が植わっている場所に立っている男性が複数いた。
彼らは卒業生や在校生の保護者や父兄ではなかった。
「早く卒業式終わらないかな・・・」
そんな事をつぶやきながら。

日本では満18歳は成人扱いされるが、18歳でも高校生は例外扱いされる物はたくさんある。
実際『18歳以上(高校生を除く)』という規定の物は多い。
しかし、高校を卒業したら、もう高校生ではないので『18歳成人』扱いとなるのだ。

桜の木の場所で待っている複数の男性は、成人向け動画を製造(撮影)と配信及び販売する業者の者であった。
卒業式を終えて高校生ではなくなった『18歳』を探しているのだ。
もちろん、単に成人向け動画を撮影するための卒業生を探すだけの単純なものではないのだが-----

卒業式が終わっても、卒業生たちは、仲良しのクラスメイト達と写真を撮ったり友情の証として私物を交換したりするので、
なかなか動画撮影対象となる者たちが1人になる事は無かった。

もちろん、あせる事はない。
過去に成人向け動画の業者が、女子高の卒業式の日に学校に入って逮捕された事件があったからだ。
もし学校関係者に見つかったとしても、
「身内が卒業式なんだけど、事情により会えないから姿だけでも見たくて・・・」
という言い訳をいくつか用意しているのだ。

やがて卒業生たちも帰途につくために学校を出るのだが、
多くが仲良しグループで最後に飲食店で卒業パーティーをしたり、保護者と帰るという事もあり、
1人でいる卒業生は、ほとんどいなかった。

その数少ない『1人でいる卒業生』が、動画業者たちのターゲットであった。

次のページに進む

(前のページに戻る場合はブラウザで戻ってください)

小説のページINDEXに戻る

サイトトップページに戻る


モカの夜更けのティールーム
https://moka-tearoom.achoo.jp/