「では、求職中、と・・・」
今後の進路の項目は、求職中で締めた里奈だった。
その後は、出身地は、好きな食べ物は、生年月日は、血液型は、休みの日は何してるのか、等々、よくある質問だった。
最後に里奈は、「アンケートご協力ありがとうございます」と言ったあと、こう言ったのだった。
「もし、就職先を紹介してもらえるなら応じますか?」
すると葉月は、「応じたいけど、聞くだけ聞いて不採用なんでしょ・・・」と、投げやりな言葉を返した。
里奈はしばらく置いてから、「それでは・・・アルバイトをしてみませんか?」と言った。
迷うが、無職になるので収入は無いため、一旦はいい返事をするものの、
闇バイトじゃないよね、と確認してみた。
もちろん里奈は、闇バイトじゃないですよと言う。
それ以前にオレンジみかんという会社名と自分の名前を出して名札まで見せたし、
顔もしっかりと見られてるから、こちらは悪い事はできない立場なのよ、と言った。
「あ、もちろん嫌ならばいつでも断れるからね。今の時代うるさいから、下手な事できないのよ」とも言った。
葉月は、ついて行く事にした。
歩いて10分程で、着いた場所は住宅展示場のような場所だった。
中にはスーツ姿の男性がいて、葉月は「ようこそ。高校卒業おめでとう」と言われた。
里奈から連絡があったからだ。
「話は聞いてるよ。高校卒業したものの就職が決まらないんだっててね」
「親にもうるさく言われてて困ってるの・・・」
「高校卒業したばかりとはいえ、今だと18歳は成人扱いだから、無職で収入無しは肩身が狭いでしょうね。
世間は無職とニートの区別がつかない人が多いから尚更だよね」
「そうなのよね・・・」
葉月は、ため息をついた。
「そこで、アルバイトして、少しながらも稼いでおいた方がいいよね」
「はい」
葉月は両親と同居している。これまては学生だったので、お小遣いをもらっていたものの、
無職となると両親にお小遣いちょうだいとは言いづらいので、服を買ったりお出かけの資金などは、貯金を崩すしかないのだ。
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