「ところで、葉月くんは高校は卒業したけど就職が決まらないんだよね?」
と、清水が言うと、葉月は「・・・はい・・・」とだけ返した。
「だったら、ウチに就職しないかい?今回のバイトみたいに、えっちな動画の女優としてさ」
「ええっ・・・!」
まさか、そんな事言われるとは思ってもなかった葉月は驚いた。
「もちろん正社員だ」
「あ・・・もちろん嬉しい話ではあるのですが・・・。えっちな業界に就職って、親に何て説明したらいいのか・・・」
まさか親を説得してもらう訳にもいかないのだ。

「あまり表向きにならないけど・・・えっちな業界の場合、従業員には系列の別会社の名前で給料明細を発行したり公的手続きをするのは知ってるよね?」
「話は聞いた事あります」
「さすがに親にはえっちな動画撮影する業者に就職って言えないよね」
「はい」
「つまり・・・表向きオレンジグループの別会社の社員として入社するんだ」
「なるほど・・・」
葉月は心が揺れ動いた。
親にはオレンジグループに就職したと言えばいいんだ。ここオレンジムービーも、本当にオレンジグループなのだから。

その日の夜------
葉月はオレンジグループの通販会社のオレンジテーブルで面接をした、と両親に話した。
「卒業式の日に、よく面接できたねえ!」
驚いたのは母親だった。
「卒業式の日だからなんだって。もし卒業しても進路が決まっていない人がいて、進学せずに働く意欲がある人限定で、救済の意味で面接を行うんだって」
もちろん、清水にこう言うように言われているのだ。
「オレンジグループの通販社のオレンジテーブルなら、大丈夫ね!いつも利用している通販会社だもの・・・」
「今日は面接しただけで、採用・不採用の連絡はまだよ・・・」
実際は動画女優として採用されたのだが、まだ面接だけだと言うように、とも言われているのだ。
「そ、そうかい葉月。採用されるといいねえ・・・」
喜ぶ母親とは裏腹に、父親は歯切れが良くない言い方をしていた。
というのも、彼は知っていた。
オレンジグループには成人動画を作成・販売配信をしているオレンジムービーがある、という事を。
そしてオレンジムービーの女優や男優に限らず関係者の多くが、表向き他のオレンジグループの社員という事にしている、という事も知っていた。
もちろん、普通にオレンジグループの社員も多くいる。
それを知っている父親だったが、まさか「採用されたら普通にオレンジテーブルの社員になるのかい?」なんて聞けなかった。

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